たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

花の時

このごろ歳のせいなんだろうか、花の美しさに惹きつけられている自分を発見する。花に関する本や雑誌をいくつか購入しているのに気づく。


少し以前に、購入した澁澤龍彦著『フローラ逍遥』。これは文章を読むというより、古今の植物画を楽しむ図鑑としてパラパラと眺めている。残念ながら文庫本だけれど。


それと気になりつつも、なかなか買う勇気のなかった『花時間』という雑誌。
家内と一緒に書店に出かけたときに、ドサクサまぎれでまとめ買いした。掲載写真の色彩センスが秀逸だと思う。


今日買ってしまったのは、浦沢美奈さんの『お花屋さんのお花ノート』。以前から店頭で手にとっては立ち読みしていたのだが、独特なボッテリとした色彩感覚の写真がとても魅力的。『花時間』のすっきりとしたホワイトベースの写真とは異なり、重厚な味わい。とうとう一人で買ってしまった。フローリストショップ プーゼという花屋さんを経営する傍ら、自ら花の写真を撮影していると記載してあってすごい才能の持ち主だなと感嘆した。


花は、もともと虫たちをおびき寄せ受粉させたり実を成らせて鳥に種を運んでもらうための生存手段として発達したものとされているが、なに人間だって花を見たいがために種を増やしたり栽培したりしているのだから、植物にとっては人間だって上得意様なので愛でられるようにその美しさを進化させているのは確か。
花の美しさをいくら楽しんでもバチはあたらないだろう。


また男性が花の美しさを愛でるというのはなんとなく抵抗感があって、そんな気持ちをおおっぴらにするのは気がひけているのだけれど、まあいいか。恥ずかしがるような歳でもないしね。美しいと思うものは美しいと表明してしまおう。
若い頃には、花を前にしても、その美しさがベールを介するように間接的にしかこちらにやってこない感覚に悩まされた。しかしベールの正体は、感覚に分類されるものではなく勝手におのれが作り出す余計な想念だったのかもしれない。


最後におまけとして6月に見に行ったバラ園の写真を一枚。こんな豪勢に咲く花もまた楽しい。一部修正を加えているけれど、たぶん見た目ではわからないと思う。