たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

丁寧な生き方

自動車用品のイエローハットを一代で創業した鍵山秀三郎さんは、お掃除する社長さんとしても有名だった方だ。恐ろしいくらいに時代の流れに逆行するかのように、とにかく地道な方へ地味な方へと道を歩まれる姿に憧れを感じてきた。著作も昔から読ませていただいているが、今朝は『丁寧な生き方』という短い文章に触れた。

手間ひまを省き、結果だけを追い求めてきた昨今の生活様式が、殺伐とした風潮を生み出している原因ではないでしょうか。
たとえば食事、数十年前までは、準備に一時間、後片付けに一時間を要するのはどこの家庭でも見られた普通の光景でした。
ところが最近では、スーパーで買ってきた冷凍食品を数分間電子レンジで温めれだけで食事ができる時代になりました。・・・


確かに、その分、便利にはなりました。しかし、反面、生活の潤いとか温もりが感じられなくなりました。


鍵山秀三郎著『ひとつ拾えば、ひとつだけきれいになる―心を洗い、心を磨く生き方』 PHP研究所 p.76


手間ひまを省くのは、時間がもったいないからに違いない。結果だけが手に入ればいい。まだるっこしい途中のプロセスなんていらないと自然に考える習慣がついている。たぶんこれは、企業の中で、効率的に働き方法を模索して出てきた考え方だろうと思う。同じ時間で生産性が向上すれば、より多くの成果が得られてひいては企業の発展に繋がる。こんなことは、当然のことじゃないか・・・


このようにして効率的に働くために、集中して物を買い、一度に作ってしまえば、物の値段は安くなっていく。企業も発展する。その路線をどこまでも突っ走ってきたわけだ。迷ったり悩んだりすることは職場ではあり得ないことがらで、こんな非効率なことはない。なぜなら何も産み出さないからだ。


こうして目いっぱい効率的に働いて、短時間でたくさんの仕事をこなして、自分のことや家族のことや地域のことは、いずれそのうちと考えて、あと送りを続けていればやがて定年になってしまう。可哀想なくらい一所懸命働いて、さあやっと自分のことを、家族のことを、地域のことを考えてみようといっても、もう誰も待ってくれていない現実があるんだよね。自分が一人ぼっちになっている事実だけが待ち受けている。そしてその責任を会社が取ってくれるはずもない。


今しか生きている現実はないはずだが、いちばん人生で大切にしなければいけない自分や、家族や、地域のことを考えずに老いてしまう。潤いや温もりを、いずれやればいいやと言い訳してね。


にほんブログ村 ライフスタイルブログ 生き方へ

人気ブログランキング