たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

レオナルド・ダ・ヴィンチ・コード

表題に釣られてレンタルで借りて見た。
同時代のライバルのミケランジェロとは仲が悪かった。でもミケランジェロダビデ像は傑作と認めていたようで、手稿にダビデ像のスケッチまでしている。ミケランジェロが世俗的な意味で成功を収め、莫大な資産を残したのに対して、ダ・ヴィンチは何となく貧乏につきまとわれて暮らしたようだ。そんなこともあってか、弟子に対して自分の前でミケランジェロという名を口にするなと禁じていたらしい。


デッサンの線質からするとダ・ヴィンチの線は素晴らしい。完成品になっている。ミケランジェロの線は、どことなく仮のもののような印象がある。やはり彫刻のための下書きなのではないかなと思う。ラファエロの線は、もっとフワフワしていてもっとラフなスケッチの感じだ。ダ・ヴィンチの線は、芸術家と技術者が一個人に共存したような緻密さに満ちている。


豊かな才能があふれ出たかのような芸術活動をした割には、世間的にはあまり評価が高くない印象を受ける。世の中に迎合して生きていくことなんかできなかったということみたいだ。予想外に質素な生活で、世の片すみでコツコツと絵を描いた生涯を送った。晩年になるまで不遇さを嘆いていたようだ。依頼されて着手した『モナ・リザ』は完成しても、なぜか依頼主には引き渡さず、亡くなるまで自分のアトリエに飾っていた。ダ・ヴィンチ亡き後、弟子のサライ領主に売り払ってしまう。


ダ・ヴィンチの墓は、どこにあるのか定かでない。フランス革命の際に墓が掘り起こされ、他の遺骨と混じってしまいどれがダ・ヴィンチか判らなくなったらしい。ただ飛びぬけて前頭葉の部分が大きな頭蓋骨が出てきて、この異様な頭蓋骨はダ・ヴィンチのものに違いないということで墓を再建したとのことだ。


約500年後に実現する飛行機やパラシュート、それに戦車などのスケッチを手稿に残している。技術者として恐るべき忠実さを持ち合わせていながら、一方、名画の数々を残している稀有な存在。この人にとって美とは何か。


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