たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

訂正

7月11日のこのBLOG記事に、ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』に描かれたヨハネの首にはペンダントらしきものがあると記したが、これは正確ではなく訂正したい。


先日出かけた松本市美術館には、美術情報図書館があり、ここに大型本の『LEONARDO 最後の晩餐』があった。ピエトロ・C・マラーニとピニン・ブランビュッラ・バルチーロンの共著で、最後の晩餐の壁画に登場する人物の隅々に至るまで、あらゆる倍率で拡大した写真類を収録したマニアックなもの。


拡大された最後の晩餐の細部を見ると、壁に描かれた絵の具の皮膜はひび割れ、捲くれあがり、その皮膜の断片もかなりの部分が脱落して失われていて、まるで古くなりひび割れが走る鏡餅の表面のようだ。また、壁自体にも亀裂が走って、この壁は当初から問題を孕んでいたらしい。16世紀には損傷が現れ、いく度か修復されてきた経歴を持つ。


ヨハネは、確かにブローチのような衣服を留めるための飾りをつけているが、ペンダントのような鎖はなかった。いや正確にいうと鎖のように見える細い線が絵画には見えるのだが、壁の亀裂の溝がブローチを貫く形で斜めに走っているためだとわかった。


ヨハネは金髪に描かれており、誰よりもやさしさを湛えている。拡大された画像を見ても、ダ・ヴィンチの絵画の中ではめずらしく女性的な表現となっていると改めて感じた。