たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

ひっかかりやすい?

ずっと考えてきたが理由がよくわからない。
銀塩写真で撮影した写真と、ディジタルカメラで撮影したものと比較すると、デジタル写真での美術品鑑定が困難になったという中島誠之助さんの言葉だ。「開運!なんでも鑑定団」には視聴者からの鑑定依頼が、全国から五万点寄せられているそうだ。一度に五十枚くらいの写真を見て内容を判断していく。

光学レンズでフィルムを使った写真は、絶対に真贋がわかるが、デジタルカメラの場合、解像の性能がよくなりすぎて、なんとしたことか逆に真贋の判定に非常に迷うことが多く、写真鑑定には以前より時間がかかるようになった。
中島誠之助『ニセモノは なぜ、人を騙すのか?』p.67

壷などの立体物では姿のラインが違うのでニセモノがわかるのだが、難しいのは、掛け軸のような平面形状の複製品らしい。いわゆる工藝版の複製品の写真判定が難しくなったということらしい。


デジタルカメラの心臓部はCCDという画像処理チップ。トンボの眼のように単眼が何十万個、あるいは何百万個と集合してひとつの眼となっている。単眼には形状を認識する機能はなく、明るさと色彩がわかるだけだ。粗いモザイクをかけて画像を四角い小領域に分割して詳細が見えなくしたあのイメージ。


技術の進歩でCCD素子の画素数が飛躍的に増えたので、充分に人間の眼の判別機能(分解能)を越える状況になった。昔のフィルムの銀塩写真と変わらなくなった。人間の眼は、本を読む距離で0.2mm離れた点を認識するのが限界と言われているから、ここから必要な画素数がわり出される。だいたい雑誌にのせるサイズの写真では300〜400万画素のデジタル写真で十分ということだ。


さて本題だが、充分な画素数を持つようになったデジタル写真により、真贋の判定が容易になったというならばわかる。しかし・・・逆だとは。
高分解能で細かくギラギラした画像の質感が、ホンモノのもつ繊細で微妙な味わいを再現し、偽装するのだろうか。


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