たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

絵画教室にかよう生徒さんの話。

聞いた話なので真偽のほどを事実確認したわけではない。しかしありそうな話であり、ひとりならずも聞く話なので、単なるうわさとは思われない。


ある絵画教室では、描く画題から構図から色から先生に決められてしまう。もちろん何らかの公募展に出そうとする意欲的な生徒さんなのだと思う。作品の仕上げは先生が加筆。かなりの程度まで描きあげてしまう場合もあるのだそうだ。そして入選したりする。なかには重症な人もいて、自分では満足に描けないにもかかわらず、先生のおかげであちこち入選し、名前が知れてしまう。


あの人は、この先生のお弟子さんということで定評が定まり、先生から離れることができなくなるとのことだ。


本人は内心とても苦しいと思う。自分の実力は、自分がいちばんよくわかっているはずだ。自分よりしっかり描いている作品や、すばらしい作品を前にしたら、自分も頑張ろうと思うより、ねじれた気分に陥り気持ちが暗くなるだろう。


自分の思うように、自由に描きたいという人もいる。そういうお誘いを受けることもある。つまり先生から離れ、自由に描いてみたいということなのだ。


ご自分で絵は描かれないが、気に入った絵を高いお金を払って集めておられる方がいる。この方が先日嘆いていた。この地方の絵画の世界はとても風変わりで、絵画教室に生徒が入門すると、先生のスタイルや個性にすっかり染め上げられてしまうのだという。作品を見ると、これはあの先生の教室の息が掛かっているとかがすぐわかってしまう。


続いて語っておられたのは、中央の画壇とかはそんなことはない。生徒の個性と先生の個性がまったく異なっているのが普通だ。個性を育てるのが教室の意義なんだと。地方の展覧会は一度見たら二度と行かないと言われていた。


絵のそのもので勝負することを再び思い起こすべきだと感じる。好い絵は誰にでもわかり、愛される。その原点を失ったら絵は死んでしまう。今日もどこかで、名も知れず頑張っている画家がいることだろうと思う。彼らに負けないよう日々努力すべきなのだ。