たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

海外の水彩画家

率直に言って、海外の水彩画家の層は厚く、また技術レベルはかなり高いというのが実感。とくに垂らし込みの技術やにじみ、ぼかしのテクニックには、舌を巻く思い。

ざっと手元にある著書を調べてみるとこんな感じ。

  • Marilyn Simandle(米): グラフィック社から翻訳本が出ていて知る。いまは絶版になってしまいAmazonで調べると3万以上している。その後、原本を購入。淡いピンクから紫の微妙な色使いが見事。こんな色合いを風景の背景や陰に使う。
  • Nita Engle(米):Amazonで原著を購入。この人の垂らし込みは凄まじい。こんなビチャビチャで描いていてまとまるのだろうかと心配になるくらい。森の表現など、すばらしいテクニックが見れる。
  • Charles Knight(英):水彩の技法をまとめた翻訳本で知る。以前より憧れている画家なのだが、著書が手に入らない。水墨画のような雰囲気にも通じていて、感性的に惹かれる。
  • Barry Herniman(英?):最近知る。自身の絵画の制作過程を詳しく著書に書いていて、まねしてみたい作家だ。単色を使うことがないといっていいくらい、いろいろな色を混ぜて複雑な色合いで画面を構成する。
  • David Curtis(英):この人も最近知った。画面の中に紙の白がなくなるくらい塗りこんでいるようだ。一見くすんで見えるので、水彩らしくないところもあるが、くすんだ中の独特の繊細な表現が美しく、思わず惹き込まれる。技法をあまり明かさないようだが、製作工程はかなり複雑で時間をかけているはずだ。ちょっとまねできない感じもする。複雑な色合いを駆使する。


日本の作家は数が少ない上に、どうしても日本画的というか精密画のような静かな雰囲気の画面構成が多いと思う。米英の作家のような大胆な手法、大胆な表現がとられていない。だからこじんまりとした優しいものが多い。


それに日本では、油絵を描く下描きに過ぎないというとらえ方が依然多い。小学生がやるものというか、初心者がやるものという通念が、はびこっているようだ。地位が低い。だから本格的に取り組む人が少なく、層が薄い。表現の幅は広くて、かつとても難しい画材だと思うのだが。