たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

『定年は夫婦の危機』

本の帯に、「定年うつ」激増!「カネとカミさん」対策を万全に!とある。野末陳平さんの『定年病! (講談社プラスアルファ新書)』という本だ。ずいぶん前に読んだと思っていたが、本の奥付を見ると2007年6月発行とある。何のことはない、たった2年前。


たまたま手元に本が積んであって、ちょうど自分の境遇が一致することもあり再度読んだ。この本のことをことさら意識したのは、他でもない。「カミさん」対策の記述が印象に残っていたこと。それに最近ハッキリ耳元に聞こえてくるカミさんたちのこころの本音を思い浮かべたからだ。


『カミさんは定年を歓迎しない』という刺激的な章の中には、次のような記述がある。2006年秋に生命保険会社の関連団体が、40代〜50代の既婚男女を対象に行った調査結果が新聞に掲載されたそうだ。夫が定年退職して夫婦で過ごす時間が増えることについてどう思うかという質問への答えなのだが、見事に夫婦の危機を暗示している。
うれしいと答えた夫は48%。うれしくない夫は16%。
うれしいと答えた妻は27%。うれしくない妻は32%。


退職して自由な時間をもてあます夫という存在が、奥さんから歓迎されていない。いや迷惑がられているらしい。陳平さんはズバリこう言い切っている。

妻っていうのはね、亭主が会社会社、仕事仕事で追いまくられているうちに、子育てを終わって、一人で時間を自由に使い、友だちを作り、好きなことをどんどんやって世間を広げ、とっくにもう自己を確立した別人格の女になっているのです。そういう自立したオバサンと昔のイメージで生活していこうなんてこと自体、無理に決まっているじゃありませんか。

P.68

要するに亭主のとんだ勘違いに早く目覚めて現実を見つめなおせ、という忠告なわけ。

意地悪くいうと、退職して稼ぎのなくなった亭主は、もう迷惑、邪魔者でしかないというのがカミさんの本音でしょうね。
・・・(略)・・・
毎日家でゴロゴロするようになると、カミさんのストレスはたまりにたまっていく。
「毎日宿六が家にいるから、うっとうしくて」なんて最初は友だちと憂さを晴らしているけど、そのうち、亭主に面と向かって、「どこかに行ってきなさいよ」「行くとこないの!」「仕事でもしたらどうなの」

p.71


いや正直な話、先日、某奥様の口からまったく同じ文言のボヤキを聞く機会があり、しかもダンナが定年になると、奥さん同士の会話のなかで互いの身の上を案じたり、同情やボヤキの言葉が激しく交わされるらしいのだ。(ここまで重大問題としてとらえられていたとはねぇ、知らなかった・・・)


ダンナ側からすれば反省する面もある。仕事だとか会社だとかを盾に使って家庭や妻のことを真剣には顧みなかった側面がある。どこまでも自分中心で相手の立場に立つという訓練がされていない男どもは、定年後も変わることなく部下がやってくれていたように妻も自分に仕えて当然という態度が抜けない。


地域とのつながりだってこれまで考えたことがない、というのが正直なところだろう。隣の人を知らない。知ろうともしない。だから会社以外に行くところが無くなっていることに気づかない。地域のコミュニティに参加しようにも、知り合いがいない。付き合い方もわからない。もう上下関係の縦社会ではなくなっているわけだが、会社に飼いならされてしまった結果、平等社会で生きるスタイルを身に着けていないわけだ。亭主にとっては、へこむことばかりだね。


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