たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

男の顔

昨晩は、いつものとおり東京から駒ケ根に向けて高速バスで移動した。座席がたまたま先頭列で前方の景色や運転手の様子などがよく見えた。新宿を出発して中央道を下る。八王子まで途中乗車のバス停がいくつかあって、あるバス停で母親と小学生と思われる男の子が乗ってきた。母は、お世話になりますと明るい声で運転手に声をかけた。男の子はもう既に座席の方へ小走りしている。


バスの発車間際にふと外に視線を向けると、バス停の暗がりの中に白髪まじりの男性が立って、こちらを見つめているのに気づいた。
何をしているのだろう・・・そうか、この母子を車か何かで送ってきたのだなと思った。きっと娘と孫のバス旅を見送りに。


男は手を振るわけでなく、ただぎこちなく視線をバスに向けている。バスの車内灯で男の顔が暗がりに浮かんでいた。ボクはその初老の男の顔を見た。なぜだか子供や孫を思う気持ちがストレートにこちらの胸の中に飛び込んできた。こんな一瞬の場面で見知らぬ人の心の働きを受け取ってしまった経験は初めてだった。


やがてその理由はすぐに思い当たった。ボクはかつてこの小学生の男の子で旅立ちを見送られたはずであり、やがてこの祖父のように誰かを見送ることになる。その小さな場面の中にふとおのれの人生を重ねてしまった。



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