たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

理由はないけれど

子供の頃、家がかなり貧乏だったこともあって、いつも買い物には罪悪感が付きまとっていた。いや今でも付きまとっている。少ない所持金をいかにうまく使うかを、子供心に腐心していたらしく、本当に欲しいか、本当に必要かを3回以上自問するクセを身に着けていた。いやいや、今もそのままであると告白しなければならない。だから家族の間からはケチだのなんのと言われつつ、大きな買い物に関しては、かなり慎重に検討し、検討疲れしてしまう。


でも検討に検討を重ねて、本当に欲しいのだという結論に至っても、それはたいてい最初の欲しいと思った瞬間と別の結論になることはまずない。それに検討の結果、とんでもないムダ使いであると判明しても、ならば買うことを理性的に諦めるだろうかと考えると、ムダ使いと判っても、欲しいときは欲しいというのが人間の心理の常であり、結局は買ってしまうのである。欲しいという気持ちは欲望であり、ムダかどうかは理性の判断である。欲望は理性ではないのだから、そこには所詮無理があるのだ。好きだとか欲しいとかいう気持ちは、どこか潜在意識のほうで命じている事柄なので、いくら理屈で押さえ込もうと言ったって戦う次元が違う。


理性には理性の言葉があり、欲望には欲望の対処法がある。