たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

力を抜く

スキーの話題だが、人の滑りを見て、
『上体に力が入っていますねぇ・・・』と評することがある。
むろんよくない例として挙げている訳だ。
たとえば手の構えに力が入ってカチカチになる。
確実に肩が凝るような状況だ。
体が硬直しているのだ。


そうなるのには訳がある。
体が進む際に、どんな風になっていくのかが予想がつかないので、
あらゆる外力が来ても対応できるように身を硬くするわけだ。
まあ、四方八方に気を使って万全の体制をとる。
そんな力は要らないといくら説得しても、そりゃ無理である。


スポーツで、いちばん難しいのは、力を抜くことだと思う。
脳の指令は、筋肉の「緊張を作り出す方向に」パルス刺激を出すものと思われる。
力を抜けという指令はありえない。
脳の指令で弛緩する筋肉などあるだろうか。
脳の指令がないことが、筋肉にとって弛緩なのだ。


意識して寝ることが出来ないのと同じだ。
寝るとは意識が消えることであるのに、
眠れということを意識自体が命ずることはできない。
緊張すまいとして力を入れているようなもの。
緊張しないように指令する意識が緊張を生む。


このようなジレンマみたいな事情がある。
力が必要ないことを、体が覚えていること、
脳指令がなくとも、体は安心であると知っていること、
意識を排し、何も考えなくなる状態になるまで
修練が必要となる理由でもある。
むろん意識することで意識を排することはできない。