たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

自分の力に組み入れる

先日のBLOG記事を書いているとき、頭の隅に気になっている言葉が浮かんでいた。『ひとが否定されないルール』。脳に障害を受け重度の障害者となった日木流奈さんの著書の題名である。略歴を見ると1990年生まれだから今年は16歳になっているはず。この本の出版は2002年、流奈さんは12歳だった。当時NHKスペシャルで取り上げられ反響を呼んだそうだ。その成熟した考え方でつづられた内容は、いろいろな議論を巻き起こし、本当に12歳の障害児がそのような原稿を書いたといえるのか、信憑性を疑われるようなこともあった様子だ。というのも、母親の手を借りて文字板に記された言葉を指で指し示す方法でしか、流奈さんはメッセージの発信の方法がないからである。


でも純粋に流奈さんの記述といえなくても、母親との合作という側面があったとしても、私にはそのことについて何もコメントする気にはならない。結局本の内容が全てであるという思いがある。今回、本の表題が変に気になって、読み直してみたが、そこにつづられているメッセージは心に響く内容であり、表現はシンプルであるにもかかわらず人生の本質をついたものだとあらためて感じた。
特徴的なのは、人と人の関係における自由についての考察だと感じる。一人一人が生命を授かり、その人同士がどのようなルールでつきあっていけばよいのか。そのことへの深い洞察を感じる。これからも幾度かこの本を紐解くだろうと感じている。

「これが正しいこと」として押しつけられたり、相手を動かすために相手に不利な情報を与えないでゴマかしたりするのではなく、誠実に伝え合って、それでも契約が成り立たないときは、それぞれの場でそれぞれの生き方をするだけでいいのです。自分の力に組み入れようとしたとき、そこにゆがみが生じます。・・・
(p59)