たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

静物画の制作過程 その1

絵画教室で、先月中旬から新たな静物画に取りかかっている。引き続きF10号の比較的大きなサイズで、秋らしい果物やものたちを、静かで明るい空間のなかに配置するというコンセプトで描いてみたいと思った。したがって色は暖色系から赤系にしよう。


アクリルという絵の具を使って、果物や花びんのなどの静物を描くこと、その過程で空間や光をとらえる苦労や、そこから得られる思いがけない効果や楽しみがちょっぴりわかってきた。楽しみというより苦労が多いのだけれど。


アクリル絵の具の場合は水彩とことなり、違ったなぁと思ったときは重ねて塗っていけばいい。その分、どこで完成とするか考えてしまう。手を加えればキリが無いし、絵の生き生きとしたよさが減っていく気がする。手が入りすぎて整いすぎの感じ。写真のようにそっくりになるのはいいけれど、なにを描くつもりの絵だったのか目的を失う。


F10号キャンバスに木炭で下描き線をザックリと描いて、次に下塗りの基本色を黄色系から赤系にした。テーブルは白か黄色の明るい色彩にする。背景の壁とテーブルの境界線をどうするかがすこし悩ましいところ。先生の意見など伺いながら、結局斜め線は使わず、静謐な感じのする安定感のある水平な線にすることに決めた。背景の色はいつも難しいが、やや緑系にしようと思う。青系や紫系ではどことなく寒い感じがしてしまう。ついつい選択してしまう傾向がある。


そして今週は、少しその中のものたちの固有色を塗り始めた。色を塗り始めて気がついたけれど、どうもこの絵の主役は、中央の赤いガラスのふたつき容器だ。背景にある添え物的にとらえていたのだが、赤の色彩はどうもこの絵の主役だとわかる。何というのだろう、全体を引き締めている。


柿の実が3つ並んでいる平凡さ、単調さが気になるが、これをどうするかを決めなければならない。花びんの色合いとも、かぶってしまっており緑系の色合いが混じった変化のある色彩を配置するのがいいかもしれない。あと枯れたレンコンの芯の部分は、まだまだこれから仕上げていく。右側のかごの描き方も途中なので、ディテールを詰めなければならない。


絵というのはいつから完成形が見え始めるのだろう。下描きと思って色をペタペタ塗っているうちに、突如(そう突如という感じなのだ)絵の完成形が見えてきたりする。その感じは不思議だ。見ている視点の方が突然変わるのかもしれない。


とりあえず、今日までの途中の段階の絵をアップしてしまう。どう仕上げていくのかその過程を記録するのも、何かの勉強になるだろうと思う。先生から、ボナール風の絵だねとコメントをもらう。ボナールについては名前以外はあまり知らない。調べてみよう。


F10 アクリル 『秋の静物』 制作途上


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