たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

文章の力

絵画やら写真やイラスト画像など視覚に訴える媒体は、瞬時にあるイメージを伝達することが可能な優れた方法だ。しかし瞬時に伝達できることは、弱点にもなりうる。つぎに出現する関係のないイメージに瞬時に置き換えられてしまうからだ。TV番組を見ていながら、突然CM画像に切り替わっても、それをべつに苦にしていない。一瞬にして切替可能ということは、前のイメージが記憶に残らないということでもある。TV画面にあふれるばかりに次々と出現するイメージの前で、自分達は何も覚えていないのではないだろうか。ますます鮮やかな色を使い、目立つような工夫を凝らす方向になるのだが、それは実は逆効果を生んでいるのではないか。


長く記憶に残るのは、文章あるいは一句ではないか。そんなことを思うようになった。


画像は見ているだけで了解できるが、文章は流し読みでは理解できない。書かれたことがらを頭の中で解釈し再構築しなければ、理解ができない構造を持っている。いわば自分の中に滲みこませる動作を要求する媒体なわけで、たぶん言葉という存在に依存する限りそういう図式になるのだろう。言葉なしでは考えることも、独り言を言うことすらできない。


だから言葉や文章は人生を支える力を持つんじゃないか。深いところに作用するパワーを持ちうるのではないか。表現されてはじめてその体験に気づく。印象深い言葉に出会うことで、人生を深く理解する。


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