たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

Photoshopの参考書

本棚の一列が埋まるほどPhotoshopの参考書を買い込んだけれど、日常勉強したり、日常参照する本はせいぜい2冊か3冊というところ。そんな苦労と無駄な投資をしてきたせいか、コンピュータソフト解説の書籍の良し悪しがけっこう理解できるようになってきた。

  • ファランス辞書として使う解説書と、ベーシンクな概念をつかむためのテキスト書は、はっきり別種のものだ。前者は値段の割りに分厚くてお買い得のように思えるが、この手の本は使いこなせるようになってから利用するもの。端から読んでも理解ができない。しかし辞書として1冊は持っていてよいと思う。
  • 初心者なら、まずできるだけ薄いベーシックな解説書を選択すべきだ。画像処理の基本的ないくつかの概念が身に付いていないと、デザイナーが作り出した美しい画像に目がくらみ、支離滅裂なバラバラな知識がたまるばかりで、具体的に自分のやりたいことへの応用ができない。自分の場合も、結局簡単なことしか書いていない入門書がいちばん役に立った。レイヤーの概念やマスクの応用、チャンネルの理解などは時間がかかる上に、迷路に入りやすい。言葉が理解できないのだ。解説書の遍歴を繰り返すことになる。
  • 索引をよく見て研究する。なにを見るかというと、その内容の充実ぶりを見る。索引がなかったり貧弱なものは、本を作る過程で手抜きされている可能性が高い。寄せ集めて作った本は索引にまで配慮と労力を注いでいないので手抜き振りが現れるのだ。魂が抜けている本は、どんなきれいな装丁がされていても結局ダメである。本棚のゴミになるだけだ。
  • 索引から重要な概念をさがしてみて、本文の解説部分を読んでみる。学習する上でいちばん困るのは、基本概念を知りたくて索引から辿っているのに、基本概念の解説がない場合だ。すでに知っているものとして扱われている。これは最悪の本で役に立たない。即刻ゴミ箱行きにすべきだろう。しかし残念なことに大半の本はこれなのだ。感覚的には80%くらいはこの類だった。自分の経験では「ラスタライズしますか?」というPhotoshopの問いに出くわして、何これ?と手元の参考書を見るのだが、明確に解説した本がほとんどなかった。ラスター画像とベクトル画像の成り立ちから説き明かしてなければ、初心者(とくに独学者では)戸惑うばかり。真剣に悩んでしまう。だからこの手の解説書はずいぶんと捨てた。
  • Photoshopの解説書だけあって本のデザインは魅力的なものが多い。でも内容とは関連がないのがほとんど。装丁がステキなので内容もよいだろうと期待するのだが、どうも違う。それは本を作る過程を考えればよくわかる。本の内容を書く人と装丁などデザインを担当する人は別だ。重要なのは内容の方で、とくに文章の質、レベルである。テクニカルライティングの素養のない人が書いている本が多いが、これは結局ゴミにしかならない。端的に言って、専門家の立場でただ知っている知識を吐き出しているだけの悪文。これはどのような分野でも存在する。努力しても読者は置いてけ堀の状態になり、迷路に迷い込む。書く人間は、自分のわかっていることは、読む人も「当然」わかっているものとして論を進める。わかっているなら始めから本など買わないよ、と言いたい。読者のレベルを想定し、つまずきやすい箇所にはちょっと詳しいコラムなどがつけてあるようなきめ細かい本は稀だ。逆にいえばこのような本と出合ったときは、親友ができたくらいにうれしいものだ。
  • 経験からいえるのだが、写真家が書いた画像処理の解説本はよい本が多い。それは撮影した写真の補正をするという明確な目的意識があるためで、手段もハッキリしている。そして役に立つ。
  • 解説書だけを書く専門家がいるかどうか分からないが、解説書をまとめるために書かれた本はけっこう多い。一応手法が網羅されているが、何のために使うのかその理由が薄弱。だから勉強しても利用しないことが多い。網羅するために書くのだったら辞書でいい。


というような様々な苦い経験を経て、いま主に勉強に使っている解説書はいずれも古いものばかり。Photoshop Elements 2.0の解説書(2002年発刊、もう化石だね)、Photoshop CSの解説書(2004年発刊)、Photoshop全般の解説書(2006年発刊)である。

Elements 2.0が使いこなせれば、トーンカーブなどなくてもたいていのことはできてしまうと思う。だからCS3向け最新本などにこだわる理由はあまりないです、というのが最後のアドバイス。


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