たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

高畑好秀著『比較は不幸のはじまり』ソニーマガジンズ新書

最新の脳科学のお話が紹介されている部分が、一番興味を惹いた。
脳科学者の池谷裕二のお仕事を紹介されているのだが、脳の神経細胞は、80歳を過ぎても減らないし、脳機能も衰えない。年齢と共に脳細胞が減るというのは俗説だそうだ。


ウサギの実験ではあるが、若いウサギほど学習する能力が高いという実験結果が出る。しかし脳波がθ波を出している状態においては、学習する能力は差が出ないという。


このθ波を出すときというのはどういう時かというと、脳が何かに興味を持ったり新しい環境に置かれたときだそうだ。脳機能が年齢と共に衰えるのではなく、好奇心や関心度という部分において衰えてしまうのが、そのカラクリのようなのだ。


以前にもBLOGに記したが、脳という器官は出来るだけ楽をして怠けようとする傾向がある。人生を経験を積むごとに、新しい体験が減り、すでに知っている事柄に包まれる。


単純化して言えば、幼心の「驚き」体験が減ってしまう。ああ、これは知っているとショートカットする。θ波のない状態の中で生きているようなものだ。だから本来能力を保持しているにも関わらず、「出し惜しみ」をし「楽」をする習慣に染まるようになる。


出し惜しみをしていることを、本人が自覚していないところがなかなかクセモノだ。自分の関心のあり方が狭い領域に限定されてしまっていることを自覚せずに、若者文化を揶揄したり他を批判したり、何かと辛口になる。昔は良かったなどと口走る。


新しい関心や感動を覚えるような脳の状態、これを松本元氏は「愛は脳を活性化する」と言われたのだろう。