繰り返し心に浮かぶ・・・
ふと心に浮かぶわけは、それが繰り返し思い起こされる人生の根本問題だからだろう。そう思いながら、愚かしい自分は、いつしか日常のコマゴマとしたことがらに埋没してしまう。
さて、それではひとつの比喩を説こう。
ある町に長者があって、その家が火事になった。
たまたま外にあった長者は帰宅して驚き、
子供たちを呼んだが、
彼らは遊びにふけって火に気づかず、
家の中にとどまっていた。
父は子供たちに向かって−
「子供たちよ、逃げなさい、出なさい。」と叫んだが、
子供たちは父の呼び声に気づかなかった。
子供たちの安否を気遣う父はこう叫んだ−
「子供たちよ、ここに珍しいおもちゃがある。
早く出てきて取るがよい。」
子供たちはおもちゃと聞いて勇み立ち、
火の家から飛び出して災いから免れることが出来た。
火とは迷いの海を暗喩している。
人間はこの迷いの海の中で溺れているのだが、
本人たちはそれを楽しみとして手放すことはない。
つぎつぎと出てくる新しいおもちゃに目を奪われてしまうのだ。
自分も新しいおもちゃに惹かれて、
つぎつぎとただ遍歴を重ねているだけなのかもしれない。
こうして歳だけは増えていくのに、
賢さが増えるということはない。
そのことに気づくたびに
このおもちゃという喩えが思い浮かぶ。