たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

ビル・トッテン『愛国者の流儀』PHP研究所

TVにもときどき登場するのでご存知の方もいると思う。著者はソフト販売会社「アシスト」社長で、とうとう日本人に帰化してしまった元アメリカ人。痛烈なアメリカ批判で知られる。主張の詳細はここでは触れないが、同感できるところが多かった。アメリカの富裕層が支配しているアメリカの政治のあり方は、最近とくに目に余る感じがする。


ふたつだけ引用。ひとつめ。

使い切れない富を持ちながら、さらにそれを増やしたい人の行き場のないお金が余っている。だからこそ、お金の足りないところへ融通するという本来の「金融」の意味とはかけ離れ、持てる者の富をさらにふやす目的で世界中を駆け巡っている。
これが、グローバリゼーションにより生まれた金融システムの正体なのである。

p.102

ふたつめ。

国連のデータによると、世界の豊かな国に住む20%の人と、貧しい国に住む20%の人との所得格差は1820年には3対1だったのが、1912年には11対1、1990年は60対1、そして入手可能な最新データである1997年には74対1にまで広がった。これが搾取でなくて何だろう。

p.172


この歪みは拡大する一方のように見えるが、世の中の倣いとして蓄積された歪みはどこかで開放される方向に動く。プレートの動きによって地層間の摩擦が起きてそこに歪が蓄積され続けると、いつかは突然の地層のずれという形で弾けて大地震となるように。貧富の格差のひずみは、地震と同じでより弱いところから破綻して突然やってくるかもしれない。それはどのような形で現れるのだろう。


オマケにこの本に掛かっている帯は、今まで見た中ではもっとも秀逸。著者のビル・トッテンさんの写真が2枚、表と裏にあるのだが、愛すべきアメリカ人の表情そのものだ。