予想と逃げ
予想される困難さに向かい合うというのは難しい。この「予想される」というのが曲者で、年齢を重ねて知恵がつくほど、この未来の予想をつける能力が増してくる。「これはヤバイな」などと、これからやってくる困難さがわかってしまう。それだけ困難さを回避して安全に安全にと、楽な方へ導いてくれる。しかしこの知恵というヤツ、逃げることが巧みになるともいえる。若い頃は、怖いもの知らずで危ない状況に知らずにドカンとぶつかってしまうが、年を重ねるとまずこんなことはしない。いやできなくなる。
挑戦することは若さの特権だ、などと年寄りはまことしやかに言ったりする。要は逃げが巧くなるからなかなか困難さに立ち向かえないのだ。逃げ回って常に安全サイドに身を置くことで世の中渡っていければいい。しかし世間はそう甘くない。やらなければならない困難さまで回避するわけにはいかず、やがていつかは立ち向かう必要がでてくる。
「あ、自分は逃げているな」という知恵をつけたい。たぶんそういう知恵というものも確かにある。身を安全に置くだけでなく、自らを静かに見つめる知恵なのだ。これこそ若い頃には手にし得ないもの。
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