たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

[雑記]マリ共和国・ジェンネ

10月初旬NHKで放映された西アフリカ、マリ共和国世界遺産・ジェンネ。ジェンネとは、アラビア語で天国を意味しているらしい。ボクの目が釘つけになったのは、壮大な泥のモスクの奇妙な柔らかさと暖かさ。


年に一度泥塗り職人らが集まり、どのように泥を塗るかを相談し、彼らの指導の下、町中の子供も大人も泥塗りに参加する。高所の外壁に泥を塗るための足場となる椰子材が、一定間隔でモスクの壁から突き出ている。ここを伝ってモスクに登れるのだ。やはりモスクの正面の一番高い場所に泥を塗ることが、名誉なことらしい。この足場を使い高所へ一番乗りを目指して男たちがモスクにしがみつく。


美的な感性を元にこの椰子材が配置されているのかどうかはわからない。しかし手で塗った泥の形の柔らかさと、椰子材のアクセントが、奇妙なハーモニーを作り出して現代にはない美を感じさせる。似ているのは、ガウディサグラダファミリア寺院のような形式か。


しかし、この美の感覚はどこかで見たなぁと思い続け、あるとき気づく。宮崎駿監督の『天空の城ラピュタ』のイメージなんだね。とくに私のお気に入りのあのロボットの手と頭のイメージそのもの。柔らかく曲線で構成されていながら、内に強さを秘めている。そういえば、あのロボットの外観も泥色をしていたような。本当は、宮崎監督はジェンネのイメージを抱いてラピュタ基本的な世界を構成したのかなと思うくらいだ。


道具を使わず、手が作り出す形。そこにある共通した美しさ。手になじんだ道具の黒光りした取っ手のような。やきものに触れるような。ここには遠い記憶を辿るような、なつかしいものがあるように感じるのだが。


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