たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

手帳にも作法が

どうも物覚えが悪いなと思う。とくにアイデアとか、ふと思い浮かんだ印象などは、あっという間にどこかへ消えてしまう。思い浮かんだときの大まかな感情だけが残り香のように残っていて、そのものを思い出せなくてしばらくフリーズしていることが多い。


そんな理由から昔から長年、手帳を手元から離さずに使っている。生活をともにしているような感じだ。手帳への改良や、手帳のサイズ交換、使い方の工夫など、ずいぶん労力を使ってきたなと思う。その中でもうこれは定番となった考え方や作法というものが出てきたように思う。
人により細かい点は異なるのだろうが、たぶん基本は同じだ。

  • 手帳サイズは、ボクの場合はシステム手帳のバイブル版。大きいサイズのA5版ならたくさん書けるが、次第に携帯することへの心理的負担が増す。持ち歩かなくなると意味がなくなる。
  • きれいに書こうと思わないこと。とにかく書くことに意味があるから、清書しようと思わない。一瞬よぎった思いを忘れずに痕跡を残せばいい。ボクのメモは読めません、とよく言われる。
  • ただし、テーマと日付はどんな汚いメモでも書く。ボクの場合は、テーマは四角で囲み、その右横に西暦で日付を書き、曜日を入れる。これはあとで整理するときの唯一の手がかりとなる。
  • もったいないが、紙は表面だけに書く。裏には書かない。裏を使ってしまったとき、裏表を剥がすわけにはいかないから、整理する際にとても苦労する。一件一葉の原則を貫く。
  • どうも経験から、手帳は2つ必要。一つはどんどん書き込むためのフロー型手帳。こちらは時系列に次々とジャンルにかかわりなく書いていく。そして捨てていく。もう一つは、ストック型の手帳で、こちらは書いたものを分類して整理し、あるいはまとめて新たに書いていくもの。持ち歩かなくても構わないがうまく整理しないとメモの山になってしまう。
  • 固定綴じの手帳か、差し替え可能なシステム手帳か。ここは悩ましいがボクは一貫してシステム手帳を使っている。フロー型の手帳ではどちらでもいいと思う。固定綴じの方がすっきり小型になるので持ち歩きやすい。ただ整理してストックするときに綴じをバラして穴あけをしてという手間がかかる。
  • 何で書くか。鉛筆だと紙との抵抗感があって、なぐり書くのには適さないと思う。絵を描くときの心境とはどうも違う。どうしても書くスピードが落ちる。それに紙面が擦れると消えてしまう。そんなわけでボールペンか万年筆を使う。ボールペンは多色のものが使えて、メモにコメントを付加していくとき朱書きができて便利だ。ただ紙への筆圧が大きいから紙に筆痕が残る。ボクは万年筆を使うことが多い。しかしあまりに気に入りの万年筆だと、メモより筆記具に心奪われてしまう傾向にある。この辺もちょっと悩ましい。


最後にとっても傾向が似ていて面白いと思った本。
嶋浩一郎さんの『アイデアのつくり方』という小さな本だが、付箋紙のおすすめなんか、まさに同感!という感じで思わず膝をたたいてしまった。嶋さんと同様に、ボクの場合も、住友3M社のフラックポインターをお気に入りの本にいっぱい貼る。この嶋さんの同本P.66には《付箋を貼った本はこうなる》という写真が紹介されているが、さながらこちらの本も《そうなっている!》。この風景には、ちょっと満足感があるのだ。読み終えたという気持ちとポイントを抑えてすぐ検索できるぞという達成感だろうか。