たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

浅草へ行く

今日は、妻の用事で浅草へ出かけた。2年ごとに所属する書道の同人展が浅草で開催される。
お弟子さんにあたる2人の知り合いの方と、計4名で作品展を見に行くという趣向の長旅だった。


かつて自分自身もこの書道会に所属し、筆は持たず印刀をもって、篆刻に打ち込んだ。
しかし、出張先まで道具一式を持ち歩いてホテルで課題の作品を彫っていたくらい、
仕事の忙しさに埋もれてしまったので脱会することにした。
ご無沙汰している、かつてお世話になった先生方の作品を拝見するのが楽しみでもあった。


篆刻は、せいぜい一寸角ほどの印泥一色の世界なのだが、その世界の深さは尽きることがない。
亀の甲羅に鋭い刃物で占いのためにキズをつけるところから漢字の原型が生まれ、
やがて鋳物の表面に鋳込まれた金文に形を変え、それが歴史の中で篆書体や、
隷書体、楷書体などさまざまな書体に発展した。


それらの字形を美としてとらえたところがすごいと思う。芸術の域にまで高められたことが驚異である。
達筆だねぇとかいって、字が上手いことを当たり前にほめたりするが、
日常生活の中から生まれた記号である文字に美を見出すとは、あらためて
とても不思議な行為だなと思いなおした。