たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

千に三つ

研究関係の仕事をしていると、特有のモノの言い方が身に付く。
そりゃ、千三つだよ、とか言う。千ものテーマにトライして
モノになり成功するのが三つという意味だ。
テーマが頓挫したときに担当者を慰めるために言うこともある。
勇み足の若手に、まずテーマは失敗するから、やめとけという場合もある。


そうは言いながら、昔から疑問だった。
なぜ十三つや百三つにならないのだろう。
自分でいくら頭がいいと思っていても、所詮、100%間違いなく頭は悪いものだと
判断していいということなんだろうか。失敗を目の当たりにして、いつもそう思う。
人間はなぜそんなに頭が悪いのだろう。
少しはマシな頭ってものがないのだろうか。


一つのモデルを思い浮かべている。
頭の働きは、一本道だ。二つのことを同時に考えるということはできない。
次々と勝手な雑念が思い浮かんでいても、二つの雑念を同時に思う芸当はできない。
必ず一つである。
そういう頭の悪さがある。


ところが現実はどうだろう。二つどころか五つも六つも原因や結果が重なり、
それらが織り成して進んでいっているではないか。
多次元で多様な世界で、いくつかの事柄が相互に関係を持ちながら、
川のように流れている。
研究テーマだって、この部分を改良すれば素晴らしいものが実現しますと、
ハッタリをかましてみても、実際には、この部分もあの部分も、
そして気づいていなかったこんな部分も、ぜ〜んぶ改良しなければいけなかったりする。


単純で一本道の悪い頭は、こんな複雑な現実の中から、自分の都合のいいところだけ、
選んできて、自分の都合の良い理屈をこねてしまう。
いや頭悪いから、複雑な現実から道を選んだという訳ではなくて、
それしか見えなかったというお粗末なこともある。


だから、うぬぼれるのは止めとけと思う。
現実がわかっているなんて思わないほうがいい。
そんなことは、普通の人間にはまず成し得ないことなのだ。
(と最後は、年寄りじみた言い方で終るのだが)