たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

恐れという見えない支配者

怒りとちがって恐れは、外部に表出することはない。
それは心の奥底に巣食って隠れている。
およそ能動的とはいえない生き物だ。
だが、人の心や行動に及ぼす影響は恐ろしいものになる。


晴佐久昌英さんの著書『星言葉』から。

愛の反対語は憎しみではない。憎しみは屈折した愛だからだ。
憎しみすら感じない無関心こそ愛の反対語だという考え方もある。
しかし、それでは関心があれば愛が働くかというと、そうとも限らない。
愛の対極にあって、愛の働きを封じる力、それは恐れだ。
恐れこそ、自らを闇へ封じ込め、人と人を限りなく隔ててしまう、
愛の完全な反対語だ。
恐れは誤解を生み、猜疑心を育て、時に人を悪魔的存在にしてしまう。
(「恐れる」p.28)


たいていの場合、自分の心の奥に恐れの感情が潜んでいることを自覚していない。
生物として自己防衛本能があるから、人間は放っておけば恐れに支配され、
生きることになってしまう。
意図的にその反対の方向、つまり愛の方向に心を向ける努力が必要なのだ。
キリスト教では愛の起原は神にあると考える。
仏教ならば全ての存在に仏性があると見る。


この章の最後の、叫びにも似た結語を紹介する。

あなたの恐れが、あなたの孤独だ。
(同書p.29)