たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

『生協の白石さん』講談社

職場の後輩から、これ面白いから貸しますよと言われて読んでみた。
うん、確かに面白い。面白いという表現が当たっていない気もする。
東京農工大生協店に置いてあるという「ひとことBOX」でやり取りされる
質問、コメント用紙への、ときに真摯な、ときにおとぼけな、
ときにユーモアのある生協職員の白石さんの回答に、
なにか暖かい気持ちの交流があって、心地よいと言ったらいいのだろうか。
サービスの原点があるような気がする。


このやり取りをベースにした人気BLOG「がんばれ、生協の白石さん!」があるようで、
BLOGランキングのかなり上位に入っている。

●梅ねり、始めて下さい。
 St2

●ご要望ありがとうございます。
 なとりの”ねり梅”(税込み¥105)、
 5/20(金)入荷予定です。
 ほのかに甘いらしいです。
 白石

気に入ったのは、この最後のひとこと。
普通、社会や企業の中ではこれは、「余計なこと」、「私的なこと」に
属するとされ、たいてい回避され、時には非難され、
発言者は足を引っ張られる部分だ(自分もそうだった・・・)。
今の世の中では、こういう部分には市民権がなく、バッサリと切り捨てるのが
よしとされる。それが大人であり、偉くなったことである。
しかし、そうやって今の社会の雰囲気と言うものが醸成されてきたんだよね。
個人的なことを表に出さず、どこにも閉塞感あふれ、金勘定、損得勘定が先行して、
いまの時代が形成されている、というようなことまで思った。

●中間テストがやばかったので、
 単位があぶないです・・・・・。
 生協で単位を売ってください!!
 うめっ

●中間テスト、お疲れ様です。当店へのリクエストの多い順TOP3として何故か
 ①文具②菓子③単位と、存外にも単位が健闘しているのですが、
 当生協では、というより他の生協でも、単位の販売は致しかねます。
 次のテストで挽回して下さい!
 白石

ひとことBOXが人気を呼んで、売っているはずのない
牛、愛、そして白石さんまで、売ってくださいと書き込まれるようになり、
即妙な回答が寄せられるようになったようだ。
ここまでくると、ひとことBOXの、お客のご要望を吸い上げるという
コミュニケーションをはかる意図の枠を超えてしまったという印象だ。


この本のあとがきには、東京農工大生活協同組合専務理事の方の文章が
寄せられている。

・・・・
私一人の勝手な思いこみかもしれないが、白石さんに寄せられる
ちょっと風変わりな意見や要望を見ると、
「これはひょっとして”私のことに注目してほしい(私の存在を認めてほしい)”
というメッセージではないだろうか」と感じる。
そして私も含めて多くの”大人”は、そういうメッセージが送られたとき、
日常の忙しさの中で見過ごしたり、現状にある彼・彼女を見て、
ある先入観で接してきたのではないだろうかという反省の思いを抱くのである。
 家庭においては子と親、学校においては生徒と先生、職場においては
部下と上司の関係でも同じことがいえるのではないだろうか。
・・・・
だからこそ、どのような質問や意見に対しても率直に受け入れて、きちんと答えてくれる
白石さんの回答に接して感じられた、
”こんなことにもまじめに答えてくれた”という驚き、
”しっかり受け止めてくれた”ことに対する喜びが、
支持や共感を生んでいるのではないかと思っている。

本の最後に掲載されているコメント。

●白石さん
 好きっす。
 ---
●光栄っす。
 白石