たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

正直な言葉の強さ

先日の土曜日に、NHKこの人に会いたいという番組の再放送を見た。
10分ほどの短い時間だが、招待された人を囲んで座談をする形式の番組だった。
今は亡くなった津軽三味線高橋竹山さんが出演していた。

アナウンサー:『若い頃、旅巡業を重ねながら、将来こうなってやろうと努力や勉強をなさってきたのですか?』
竹山:『そんなこと考えてやしませんよ。お天気が雨になりそうだとか、宿銭30銭を雨が来ないうちに稼がなければならないとか、そんな日々ですよ。勉強なんてするヒマなんかなかった。努力なんてしなかった。』

眼が不自由で、貧しくて、生きていくために東北の雪国を巡業して歩く苦労は、とても想像できるところではない。若い頃の苦労の連続だった頃を思い浮かべたのだろうか。次の言葉が印象的。

つらいことは、忘れないですよ。楽しいことは忘れてしまうものです。

もうひとつ。

演奏を聴きに来ている人々が、何百人いても、2万人いても目の見えない自分には関係がないのです。演奏しながら思い浮かべているのは、若い頃の巡業で、この曲を弾いていたときに、巡査に怒られたなぁとか、餅がもらえてよかったなぁとか、あのときはつらかったなぁ、と心に思い浮かべて弾いているのです。


演奏に漂うイメージ。
どこか名も知れぬ地方の吹雪の中で続けられる漂白の旅の姿。
やはりそうだったのか・・・そういう思いで弾いていたのか。
以前購入した、竹山さんのCDをまた聞いてみたくなった。


(引用した言葉は、記憶に頼っているため正確ではありません)