たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

素描画

若い頃からずっと魅力的な線を求めてきた。
それに気づいたのは最近のことだ。
絵画を構成する要素としていちばん大きなものは線だ。
色はそれだけでは絵として独立できない。
色には形の概念がないから、色を意味づけて認識するには、形を規定する必要がある。
ところが線のほうは線だけで、独立して絵画表現になりうる。
そして自分は魅力ある線の絵画表現を捜し求めてきた気がする。


エゴン・シーレに目がないのも、その線の魅力ゆえだ。
肉体を削り取るかのようなギリギリの形状を、描き出してしまう。
線質はだいぶ違うが、ガブリエル・バンサンの省略の巧みさによる絵画表現にも
ぞっこん参ってしまう。でもシーレとちがって、形状をやさしくなぜるように、
包んでいる空気を描いているような線だ。
飽きずに眺めていたのは、篠崎輝夫さんの風景スケッチ。
ラフに描いているように見えてその線は巧みで、独特の空気を描き出す。
この人はどういう眼を持っているのだろうと考える。
安野光雅さんの安曇野を描いた画集も、一時期だいぶ眺めた。
そうそう、彫刻家の佐藤忠良さんの鉛筆スケッチは、
これは堪らない魅力に満ちている。


いい線が描ける条件とはなんだろうとつねづね考え込む。
その答えは、予断を持たずにまっすぐ対象をみつめる自由さではないかと
ひそかに思っているのだが、どうなのだろう。