たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

その2

感動とは、のせられてしまうことだと思う。
相手は手練手管を使っているかもしれない。
でも結局こちらはのせられてしまって、相手に身をゆだねる。
こころが揺さぶられるという。まさに、相手の意のままにこころが動かされてしまう。
ジェットコースター体験とよく似ている。
右や左に予想外の動きに翻弄されている自分を見出して、かつ楽しんでいる。
いい絵を見ては、たぶらかされてしまう。
たぶらかされたくて、また見に行く。
やっぱりこころが揺さぶられた。名画だと思う。


あるいはいい映画。泣ける場面が登場するところも分かっているが、
そこへ来ると、やはりやられてしまう。
本当にはあり得ない話なのに、あり得るように思えて
(すっかりたぶらかされて)感動してしまう。
たとえばトトロの中に出てくるメイの家の庭の話。
深夜どんぐりの小さな芽がグングンと成長して空に枝を伸ばし、
大木になってしまうシーン。
あるいは、もののけ姫のシシガミが歩むのと同期して、
地面から生命が芽吹いてくる。


芸術とはのせるわざだと思う。
のせられていることを忘れるくらい巧みなわざ。