たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

ある番組で

昨晩、何気なくまわしたNHKトップランナーという番組。途中からしか見ていないが、出演していたソプラノ歌手の森麻季さんの話にグイグイと惹きこまれてしまった。波乱万丈という話があるわけではないのだが、なんというのだろう、森さんの人柄がにじむ語り方、その思いや境地のようなものが、あるひとかたまりのメッセージとなって放射されている感じだった。


今は世界を舞台に活躍されている森さんだが、デビュー当時、求められてもいないヨーロッパの歌の世界で、なぜ日本人が出て行かなければいけないのか、何のために自分は歌の世界を続けようとしているのか、そんな自問に苛まれた頃のことを語られていた。たどり着いたのが、独りよがりの世界に閉じこもってしまえば答えはないが、音楽は人の心を豊かにし勇気つける不思議な力があり、人が音楽を求める限り自分は歌う意義があるのだという結論を得たらしい。たとえ二人でも三人でも聞いてくれる方がいれば自分は歌う、という力強い言葉を、てらうことなく淡々と語ってしまう信念の魅力というのだろうか。こんな謙虚な姿勢でいながら、歌えばスタンディングオベーションを受けるほどパワフルなこのトップランナーの、なんとアンバランスなことか。


昨日はなんだか疲れがたまってゴロゴロしてTVをつけたのだが、ワクワクする番組をみると、やおらむっくりと起き上がり、そのうち乗り出して見るようになり、気がつくと疲れはどこへやらへ行ってしまうものだなと実感。
疲れは、どこか退屈と似ている。そして退屈は怒りの一種なのだとは、スマナサーラ師の教え。退屈して面白くなくてゴロゴロしていたのが、急に子供のように元気になったのか。