たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

増田明利『今日、ホームレスになった』〜13のサラリーマン転落人生

あ〜あ、読まなければよかったなぁ、としみじみ思った。板子一枚下は地獄、という言葉を想起する。普通のサラリーマン人生を送っていた男たちが、ちょっとした躓きであっけなくホームレスという立場に落ち込んでしまう体験が、本人の口から語られる。


どれもこれも、どことなく似た境遇にあり、ありふれており、年代も似通っており、その人生のどこか特別というのだろう。どこにでもいる男たちなのだ。そのことが堪らなくさせる。バブル崩壊でリストラ、あるいは起業を選び失敗、会社の倒産などがきっかけになって、再就職先を探す。年齢条件に引っ掛かり中高年であるだけで就職は不可能だ。身を粉にして探しても、就職先は見つからない。雇用保険の支給が切れた先は、金に困窮し、自宅売却、離婚、蒸発というお定まりのコースだ。


この日本の社会の寒々しさはどこから来るのか。しばらく考え込んだ。45歳以上の中高年になったら再就職の道は閉ざされているという現実。20年も30年も勤めて、毎月給与天引きで支払い続けた雇用保険企業年金のバックアップが余りに薄い、あるいはほとんどないという現実。社会や企業が減点法でできているとあらためて思う。一回でも躓くと、転び続ける仕組みとなっている。だれも転んだ人間を引き上げるようなことはしない。そんなことをしたら自分まで落伍者になってしまう。だから、見捨てる。敗者復活という道は閉ざされている。川に落ちたらおしまいという感じ。


ホームレスは仕事への意欲がないのではない。仕事がないのだ。だからいつかは行き詰まり公園や図書館を住まいとするようになってしまう。この現実。

ホームレスなんて遠い存在だと思っていたけど、いざ失業すると、簡単になってしまうものだった。まさかって感じだ。


 大手鉄鋼メーカ副部長→指名解雇→就職難→上京→無一文、
 上野公園から浅草を住所とするあるホームレスの言葉。