たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

バルタザール・グラシアン『賢者の教え』

箴言集というジャンルは嫌いではない。若い頃は、ラ・ロシュフコーの『箴言と考察』を線を引っ張りながら読んでいた。ことわざ辞典の類も楽しんでめくっていた。
グラシアンという人物の箴言集を知ってから、10年も経っていない。しかしときどき読み返したくなる不思議な香りがある。いわれのない迫害の中で懸命に生きたというその半生のイメージがそうさせるのか。きわめて素朴に処世術を語る飾らない語り口に、魅力を感じるのか。ロシュフコーはその点、ややペダンチックで、装飾的だ。


バルタザール・グラシアンは、1601年スペインで生まれイエズス会の高僧で学者。神学校の教授を歴任し、王の顧問を務めたとある。しかし強固な反対派もいたようで、生涯にわたって確執が続いたようだ。そんなところからなのか、グラシアンの言葉は、敵に対して身構えて生きるという姿勢に貫かれている。


ちょっと惹かれる言葉たち。

・ガラスの輝きはそのもろさを偽るものだ
・人のことを悪くいう者は自らも悪評を集めている
・人を見抜く才能の見返りは計りしれないものだ
・愚かさに出会ったならば、見えないふりして難を避けよ
・妬みによって幸福になる人間はどこにもいない
・泣き言は絶対他人にいってはいけない
・七年ごとに脱皮を果たし自分の精神を一新せよ