たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

[絵画]無心で描くこと

鉛筆でデッサンを始める瞬間から、これからいい絵が描けそうか、そうでないか決まってしまう何かを感じる。極端に言えば、風景画で始めの水平線一本をうっすらと鉛筆でなぞる時、すでにうまくいったなと判るときと、躊躇いがあって線が決まらないときがある。その線に自分が乗れたか、あるいは乗れないで取り残されてしまうか。その感覚は何なのか長いことわからなかった。


その違いは「恐れ」なのではないかと思いはじめた。どうも、失敗してはならないとか、失敗しそうとか、余計なことを思い浮かべているときは、大体ダメである。自分の心の恐れという感情のゆらめきに気が行ってしまって、対象と一体になれないと思う。


詩の書き方でダダによる自動書記というのが昔あったそうだが、この感覚がとても重要なのではないかと思える。余計な想念を持たず、見たものを手を自由にして手当たりしだい描くところから始めなくてはいけないと思う。余計な想念、つまり恐れも期待も持たずに、対象となるものへ飛び込んでいる状態なのではないかと思う。