たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

[人生]答えのない問い

 夏休み初日だった昨晩は、NHKのETVワイド番組『女性の"うつ" あなたはどう向き合いますか』を観た。うつと共に生きる生活風景を克明に追っていくレポート部分もあって、うつを体験した人、現在陥っている人たちがその体験を公開し、互いの理解のため質問をしたり、コメントを与えたりする座談形式の番組だった。
 つまり症状を治すためどうこうするのがよいという、診察室で行われる処方箋的な会話ではなく、あくまで患者さんの視線のレベルで、体験者が自分の場合はと、待合室で談話するような設定だった。医者(健康者)対患者(罹患者)という構図からは、どうしても高低差がついてしまう。そのような構図からは、うつに罹る人たちの自由な会話は、決して生まれないという考えが感じられる番組だった。


 周囲には、洗濯物が干してあったり(とても変わっている)、イスじゃなくて、全面真っ赤な敷物の床に座椅子で車座になるなど、スタジオセットとしてもかなり配慮されたものだったと思う。


若い妻がうつを患い、仕事、家事、育児と全てを一手に引き受け支えてきた夫が、オーバーワークのせいなのだろう、やがて調子を崩してうつと診断されてしまう、そんな事例紹介があった。実際、夫妻でスタジオに出演しておられたが、周囲の出演者も言われていたように、必死に真摯に生きようとする二人の姿勢がとても好印象で、うつに罹って苦しんでいる人たちに言うのは少し変だが、さわやかな二人。一日も早く元気な姿に戻られることを祈りたい。


姜尚中氏(東大大学院教授)がコメントされていた言葉が、印象に残る。
氏の言葉の正確な再現ではないが、以下のような内容のコメントをされていて示唆に富んでいた。やはり氏もうつの体験をされてきた方のようだった。

「なぜ、うつになったのか?」
「どうして自分(だけ)がこんな状態に陥ってしまったのか?」
「いっぽう、人はどうしてみな幸せそうにしているのか?」
こうした原因やなぜを問いかける問い、いわば実存的と言うのでしょうか、
こういう問いを(病気になったときには)しない方がよいと思うのです。
それには答えがありませんし、だれも答えることはできないでしょう。
よくなる手立てを探して取り組むしかないのです。
人が幸せに見えても、その人のこころの中はわかりません。
案外悩みが渦巻いているかもしれない。人は人なのです。
答えのない問いをすることはないと思うのです。