たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

Photoshopは難しい

若い頃、繰り返し読んだ『数学の勉強法』という本のことを思い出した。
著名な複数の数学者が体得した勉強法のエッセンスを記した小さな本だった。
その中にどなたが書かれたか、記憶は定かでないのだが、
内容はこのようなものだった。
まず入門編の易しい本を読め、というアドバイスなのだ。
若気の至りで、とかく体系だった難しい大著に取り組みがち。
だが結局は挫折してしまう。その愚を戒めたものだ。


このアドバイスのことを、ふと思い出した。
じつはいま画像レタッチソフトの本を読んでマスターしようと
目論んでいるのだが、この数学者の貴重なアドバイスを、
全く無視してきた報いが来たような状態になり、
結局はじめに戻ってしまい、入門編の易しい本を探しているからである。
こういうことが若い頃からきちんと分かっていたら、
自分の人生もより効率的になり、展開して別の人生だったかも知れないな、
などと思っている。


その分野なり体系の基本骨格が頭に叩き込まれたなら、
大著を読んだとしても、自分のいる位置が自覚できる。
ところが全体像も分からず、大きな辞書の片端から読んでいくようなやり方は、
必ず方向を見失い、そのうちイヤになって放り出してしまう。


若いときからの悪癖で、完璧症というのだろうか、せっかく読むのなら、
あるいは買うのなら、全部が書かれたものでないと、
何となく損をしているような、回り道しているような
落ち着かない気分になるところがある。
また少しは自分は分かっているんだとうぬぼれていて、
自分の現状を甘く判断しているところもある。
書店で、他の人と並んで棚の前に立つとき、
初心者向きの本ばかり漁っていると、ははあ、こいつは初心者だと
思われてしまうではないか。これは見栄そのものなのだが。


おのれを身の丈ほどに低くすべし、ということに尽きるのだけれど、
そのことが分かるころには若くなし、というのは皮肉である。
先人の言うことは聞いておくべきものだな、いや本当に。