たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

うつの本

野口敬著「うつな人ほど強くなれる」を読み終えた。
店頭で見たとき迷わず買った本だった。
なぜなら病を体験した筆者が、病を冷静に見つめている視点があったから。
さらに原因について淡々と見解を述べているのが、とても新鮮だった。


著者は、うつにかかる人の性格を、
「真面目で繊細、責任感が強く、妥協せずまっすぐ生きようとするタイプ」
と推論している。
そしてこの性格は、成功する人の条件をすべて満たしていると述べる。
つまりはものごとをやり遂げるタイプの人だという意見なのだ。


うつを克服するとは、自分の心との戦いに勝利することと同義で、
最高の修行であるという。
ボクにはそこまで言いきる自信はないけれど、でも基本的に野口さんの意見には
賛成である。うつに打ち勝つことは、心の仕組みを理解することであり、自分の心とがっぷり戦い、
最終的には心をコントロールする技術を会得することであると思う。
仏教の言葉を待つまでもなく、心のコントロール術こそ最高の技術である。


自分の心と戦うとは分かりにくいかもしれない。
自分の心がパニックに陥るには、背景や、考え方、生き方の偏りが根底にあって、
あるきっかけで、それが破裂し、制御不能に陥る。
そのきっかけは不安であったり、恐怖であったりするが、
心の平静さを一気に打ち破るような感情の暴走、つまり発作が起きる。
この後は、もう注意力がロックされてしまい、基本的にほかの事に気が回らない。
傷を舐め続けるように、心が破綻していることをさらにグジグジと弄り回すような
日々が続く。心のエネルギーが残っている限り、自分で自分の心を責め続ける行為を行う。
行き着く先は自滅である。ゆるやかな自殺とも言うべきだろう。


人間のすぐれた知性が、このように自分で自分を蝕む行為に陥るということ
これはいくら注意してもしすぎることはないと思う。
心の勉強といってはなんだけれど、教養として心を養うことはとても大切であると思う。
日本人は、どちらかというと頑張ることの美学を大切に考える。
したがって、休むことがなかなかできない社会である。
そろそろゆとりを持って自分の心のあり方を見つめなおすことをすべきではないかな。