たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

ある上司

先日、会社で新年度を迎えての集まりが開催された。
開催会場の席に着いたとき、偶然かつての上司だった人と隣り合った。
はじめは気づかなかった。
その人は、隣の方としきりに私語をして、なんだか批判めいたことを
口にしているので、しだいに耳障りになった。
誰だろうと見てわかった。


この人には会社人生を狂わされた(と思っている)。苦い経験をした。
この人との会話の中で、あるプロジェクトに関して、私が、
不用意にコメントを口にしたことから端を発する。よりによって、
この人はプロジェクトの参画メンバであった。後でわかった。
私は危険人物視されたらしく、これ以降はイヤというほど逆境を味あうハメとなった。
結局、長年なじんだ部門にはいられなくなって、一か八かで飛び出した。
10年弱前のことだ。


当時、この上司は、所長という肩書きで羽振がよかった。
新しく始めた分野の仕事が、雑誌に紹介されて、しきりにそれを自慢した。
また、日本車はボディが柔らかなので事故があったときは危険だ、
だから自分はドイツ車に乗るのだと、高級車を購入した人である。
いまはどうされているのだろう。
調べてみると、4人ほどの小さな部署に席を置き、部下なし、
言葉どおりの閑職のようであった。


集まりでしきりにブツブツと批判的な私語を吐くのは、
オレは、今のこの姿が本来の姿ではないのだと、
言いたげだったのではなかろうか。後になってそんな想像をした。


私のほうは、新しい部門に飛びこんで一から出直した。
思い描いていたサラリーマン人生とはずいぶん方向修正を
強いられてしまったが、希望する好きな仕事をさせてもらっている。
その間、それまで自分のものと思い込んでいた自分の垢みたいなものを、
次々と捨てる修練をやらせてもらった。
これは本来、自分の持っていたものではない。これは、貰ったもの、という風に。
いずれは全てを捨てることになるわけなのだから。