たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

似ている

山本容子『わたしの美術遊園地』のなかに、「ありがとう、淀川さん」という軽妙なエッセイが載っている。
映画評論家の淀川さんに、たった2回しかお会いしたことがないそうだが、
会うたびに、淀川さんの強烈な言葉を浴びたそうだ。


『ぼくの映画百物語』という淀川さんの文章に、山本さんが絵(エッチング?)
を載せるという雑誌の連載があったそうで、
2回目に対談する機会を得たとき、淀川さん、
「山本さんの絵はいいね。なんといっても俳優が似ていないのがいい」
とまず言われたそうである。
チャップリンの「黄金狂時代」を描いたときには、
「本当にチャップリンに似ていないけれど、本当にチャップリンだ」
といわれたそう。


これって何となくわかるな。
絵を描く技法をなんだか壊したような、写実的とはいえないのだけれど、
妙に惹かれる絵というものがある。
(山本さんの絵がそうだと言う意味ではありません)


これからしっかり描くぞと準備して意気込んで描いた水彩より、
別の用事で出かけしなの5分前にサラサラ描いたスケッチの方が、
生き生きしている。絵のエッセンスが、立ち昇っている。


絵が似ているかどうかという批評はだれでもできる。
写真みたいだね、というのはほめ言葉なのか皮肉なのか、
よく考えると微妙な言葉だ。
絵のいいところを見るのは難しい。