今という視点
いつの時代もそうなのかもしれないが、書店にはサクセス本があふれている。
「あなたは思い通りの人間になれる」
「なりたい自分になる本」
「成功するための本」
など、このようなタイトルの書籍が並んでいて、
これらの本はいつも売れ筋であるようだ。
かくいう自分も、熱心に読んでいた時代があった。
しかし、今はほとんど手にしない。
将来の夢とかその実現とか、今ではない未来の視点で書かれたものは、
どうもすわりがわるい気がする。年齢を重ねた現在、
この先がある程度見えているということも関係しているかもしれない。
たとえとしてこんな言い方はどうなんだろう。
足元を見ずに、遠くの星を見ながら歩いているような
そんな姿勢の人間になるような気がする。
夢見がちに生きながら、現実に起きるさまざまな問題や課題に
うまく対処できない。
そのことがさらに、サクセス本を漁ることになる・・・
素晴らしい夢と、きわめてぎこちない現実の生活のギャップ。
それは、サクセス本の責任ではなく、たぶん読む側の責任なのだろう。
今日にも交通事故で命を落とすかもしれない。
大病が見つかり、余命わずかとわかるかもしれない。
あるいはオマエの人生なんだったんだと、他人に、
あるいは家族から指摘されるかもしれない。
みずから自責の念に駆られるかもしれない。
頭の中の夢と、現実の姿のギャップ。
たったいま、人生の精算をすると考えたとき、
うまくそのバランスが納まっているんだろうか。
地味かもしれないが、「今」そして「現実」が
おもてに表れている本当の世界だという思いが強くなった。