たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

あるコメント

師は指で月を指しているのに、
弟子はその指ばかり見て、師を理解したと思う。
目の前に見える即物的なものごとに目を奪われて、
真の意味に思いが到達しない。


弟子の理解は指を見ているだけだ、月を見ていないとコメントすると、
その指の定義に関する質疑にすりかわる。
そして何を言っているのか理解しない。


こういうことは日常非常に多い。
しかし、ピタッと相手にわからせることが出来ない。
言葉を費やしただけ、話はこんがらかってしまうばかりだ。
そして終いに疲れて寡黙になる。


人間の理解は多層構造をしていて、たくさん地平線がある。
見えている世界の広がりにより、どんどん深い世界が出てくる。
しかし、言葉は一種類だ。
一種類しかない言葉が、深浅の多層構造を串刺しにしているのだ。
師の世界で使われた言葉が、弟子の使う言葉と同じ。
言葉に頼りきると、混乱があるばかり。


体得するということが重要なんだ。
この基盤なくしては、本当は言葉は通じない。
話し合えば皆わかるんだという常套句は
むやみに信頼しない方がいい。