たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

ある決着

8月21日の日曜日の夕刻、いつものとおり東京へ戻るバスに乗るため、妻の運転する車で送ってもらう矢先だった。家を出発して200mくらい走ったろうか。暮れかかる見通しの悪いたんぼの中の十字路で、右から猛スピードで走って来た乗用車に前輪付近を激突され、自分たちの乗った車は左へ方向を変えながら、たんぼの土手の端まで行き、傾斜地をズルズルと落下して、水路のコンクリート壁に前バンパーが衝突して、ようやく停止した。車はフロントを下にほぼ垂直に立つような形になった。車が前転しなかったのが幸いだった。頭部打撲して救急車で運ばれた妻も、CT検査の結果、様子見を続ける程度の軽症で済んだ。


自動車事故は初めてだった。ほぼ垂直になった車のエンジンは止まっていなかった。車からはいずり出て、相手の車の方に真っ先に向かった。近所に住む就職してまだ年数の浅い若い女性だった。徐行したかどうかを尋ねたことを覚えている。あとは雨が降り出した中で、警察、保険会社、地元の車のディーラー、レッカー車の依頼、娘への事故の連絡などで忙殺された。そして救急車の到着。



あまり思い出したくない自動車事故の経緯だが、気持ちの整理がついたので記しておこうと思う。事故のあった夏の真盛りの8月から寒さの厳しくなった今日まで、延々と事故処理の保険額の算定や事故責任割合の話し合いが続いた。充分納得がいかないのだが、かといって、こだわり続ければいたづらに時間ばかり経過するのも分っている板ばさみ状態の中で、結局、已むなしと整理に整理を重ねてきて、ようやく最後の一件に決着をつけた。最後の一件とは、大破してしまった車の修復をするか、廃棄してしまうかの決断だ。


気に入って購入した黒のスポーツ系ワゴン車だったが、前輪は車軸が上を向くようにひしゃげ、右サイド側のヘッドライトから始まって、右フェンダー、右前部ドア、右後部ドア、前のバンパー全てが、原型をとどめないほど無残な姿となった。修理するには、これら右側部品と前後のバンパーを交換し、車軸を支えるシャーシにも亀裂があるため、その部分を切断し、溶接するという大修理が必要となるとのこと。むろん修理費は3桁に届く金額。


結論として車を直すと決めた。限定販売の稀少車で全国で150台くらいしか走っていない。中古車も出ていないとのことだった。愛着の気持ちがふつふつと湧いてきたことと、キビキビ乗りまわしたい気持ちが最終的に勝った。しかし修理の方向にあまり賛成していない修理工場へ、修理の意向を伝えに出かけるそのときまで、本当は迷っていた。
どの程度まで修復可能か、リスクもある。しかし修理依頼を口に出してしまうと、なんだか自分の腹も決まりすっきりした。
賭けに出てしまうと、あとは気分が楽なものなのだ。