たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

ディッケンズの『クリスマスキャロル』

クリスマスが近づいたというわけではないのだが、
先日、ディッケンズの『クリスマスキャロル』を読んだ。


学生の頃の英語の副読本がディッケンズの『デイビッド・コパフィールド』だった。
散々な思いをしながら読んだ(読まされた)のがトラウマになり、
敬遠していたところがある。


ストーリは、ケチで冷酷、人間嫌いのスクルージの前に、
亡くなったかつての相棒の幽霊が突然姿を表し、不思議な予言をする。
そんな始まりだ。
毎晩、幽霊が現れ、第1の幽霊は過去世を、第2の幽霊は現世を他人の視点で、
第3の幽霊は未来世をみせる。


自分の狭い考え方にこり固まって、その深くて狭い井戸から
一向に出ようとしないスクルージに、幽霊は、タイムマシンのような魔法を
つかって、時間を飛び越え、自我の枠を飛び越え、
いろいろな人の生き様や、世の中の実相、スクルージの生き方が
どんな結末を迎えるものなのかを、映像で見せ付ける。


その過程で、カチカチに自己中心、カネ中心の考え方にこり固まった男が、
やがて人の痛みを理解し施しをするほど、柔軟なこころに変わっていく。


自己を守るという生命の基本的要求はだれでも持っている。
しかしエゴイストのように自分だけを守ることを
とことん突き詰めていくと、結果的に自己を守ることにはならない、
という世の中の逆説。


周りを生かしていくことが、時間が掛かるにせよ、
やがて自分を生かしていくことになるという不思議さ。
なんだか大乗仏教の根本思想に触れたような気がした。


英語の副読本は、こちらを読みたかったなぁ。