たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

陰の支配者

若い頃、森田療法に関する本を手あたりしだい買い集め、読んだ。
珠玉の言葉のいくつかは、意識の中からゆっくりと沈んでいき、
ひとつひとつをはっきりと意識することが出来ない。
記憶の深いところへ収納されてしまったように感ずる。


しかし何かの折に、言葉が思い浮かんでくる。
先日、ある書物を読んでいて、森田療法とは、
つまるところ不安に対処する人生訓の集合体だと感じた。


ボクたちの人生にとって、不安はもっとも近しい友であり、また敵である。
隠れた支配者である。そのことをよく見据えなければならない。


不安が友であるのは、未来に来るべき危険な事態を予見して、
それに対して備えることを警告するからだ。
人生の敵となってしまうのは、危険な事態がないのに、
自ら危険を創作する働きをすることがあるからだ。
ボクたちの目の前のスクリーンに、招きたくない事態を
映し出して見せることがある。


これは厄介な状況だ。
そしてだいたい間違った選択をしたり、
見当違いの行動を取らせたりする。
目の前のスクリーンに現れたものを、
川の流れの上に浮かぶ、ときどき現れては消える泡のようなものだと、
見据えられるようになればいいのだが。
なかなかそう単純には達観できない。