たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

鉛筆模写 ルノアールの少女

デッサンの練習のため、今度はルノアールの絵画に出てくる少女の模写にトライしました。じつはこの絵画は、自分にとって長い付き合いです。というのは自分の子ども時代に、父親が安物の複製品を部屋に飾っていて、家の中でいつも眼に触れていました。こんな美少女がいるのだなぁ・・・と気になる少女でした。


絵画の由来を調べてみると、モデルはパリに住むユダヤ系銀行家のルイ・カーン・ダンヴェールの長女のイレーヌという実在の少女で、当時8歳(!)。母親の依頼を受け、ルノアールがダンヴェール家の別邸の庭で肖像画を描いたとのことです。この気品あふれる姿は、そんな年齢を思わせません。それに肖像画らしく顔の表情も明確に描かれていて、ほかのルノアールの絵画に出てくる女性たちの表情が、どこか朦朧体に描かれているのと対照的です。



ルノアール「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」の一部模写
月光荘スケッチブック F6号 鉛筆B2、B4 3hくらい


顔を描くのはいつもむつかしく、ほんの1mm以下の眼の位置のズレや、あごの位置の狂いで顔の表情が変化し、しかも年齢の雰囲気も変わるという過敏な部分を含んでいます。人間の目は他人の表情を鋭く読み解き生活してきた習性があるので、表情のわずかな変化も取り逃がさないのです。したがって顔を正確に描くことは、デッサンの練習にはいちばんですが、それだけに辛いところもあります。