たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

石膏デッサン

今日は絵画教室に出かけました。
前回人物デッサンが一応完成ということになりましたが、なんとなく未だ食べ足りない気がしていました。もう少しデッサンをやってみたい気持ちを先生に伝えたところ、
「じゃ、いっそのこと石膏デッサンをみっちりやる?」
「・・・ハイ」
先生のアトリエには、デッサン用石膏像がいくつかあるそうですが、
「手頃なサイズで、アリアスをやる?」
「あの難しいアリアスですか?先生のところにあるのですか?」


じつは高校生の頃、誰も来ない美術部の部室で、ひとりアリアス(アリアドネと当時は呼んでいましたが)と格闘して、木炭デッサンにはいろいろ苦い思いがあるのです。まずこの美しい女神の顔が繊細で、表現しにくいということ、予想以上に頭が大きくバランスを取りにくいということがあります。また朝から夕方までデッサンをしていて、一日のうちで光が変化していつまでたってもまとまらなかったということです。


先生のお話では、難しさとしてはアリアスは中級の上のランクだそうです。
準備したアクリル画は保留して、急遽、木炭デッサンをすることになりました。道具も先生からお借りしてしまい、画材屋としては失格だな・・・と思いながら。


2時間ほど教室で格闘し、そのあと家で1時間ほどデッサンしながら、自分の気持ちに気づきました。一つは、いつかアリアスのデッサンをやらなければいけなかったのだという思い。もう一つは、恥ずかしいのですが執着からかアリアスという女神の美しさに惚れているのかもしれないな、という気持ちです。


それはともかく、今日の格闘の結果は以下のとおりです。未完です。

木炭紙(500×650mm)に木炭。約3時間。



顔部分の拡大。


先生のコメントとしては、
「アリアスの雰囲気は捉えている。
それから石膏の各部の位置関係をつぶさに観察すること。たとえば鼻の先端と髪のカールのある部分が、どのくらいの距離にあり、水平線からどのくらい傾斜しているか。またその距離と(たとえば)首の太さとの関係は正しいか。アリアスの頭部は、見た目以上に大きいので特に頭部のサイズは正確に捉えること。描き始めの段階では、鼻の長さがやや長めだとのこと(この部分は家で修正しました)。」


それから注意されたのは、石膏像の正中線が、描く角度から眺めたときに、どのように変形して見えるかをよく観察して、デッサンをチェックすることです。正中線はちょっとわかりにくいですが、顔、首、胸の各部分は左右対称で、皮膚表面に中心線が描けます。頭の頂上から額の真ん中を通り鼻の先端にいたりあごの中央を通り・・・という線です。この線は真横から見ると、横顔の輪郭線に一致します。斜めからみると複雑に歪んだ線です。これを正確に描くことで、デッサンの正確さが出てくると思います。


最後に、大きな陰影を捉えること。部分部分を描いているとその部分のハイライトと暗い部分を描いてしまいがちだが、そのハイライト部分は全体の中では暗い部類に属することもある。その暗い中での明るい部分とさらに暗い部分という風に描くこと。全体のトーンの段階をきちんと捉えること。じつはこれがいちばん難しいかもしれません。明るいと思っても全体の調子の中では暗かったりするのです。


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