たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

日曜美術館 田中一村

例によってTVのチャンネルサーフィンしていたら、田中一村の絵画が放映されていた。先週9/12(日)の日曜美術館の再放送だったらしい。いい加減に断片だけ見るところは悪いクセだ。
田中一村 奄美の陰影(NHK日曜美術館)


番組の中の紹介では、田中は50歳で奄美に渡ったとある。東京を捨て、中央画壇を捨て、すべてを投げ打って挫折の果ての島暮らし。生涯でこれ以上の作はないと自信を持って応募した作品が落選。その年齢では美大の同期生が審査員をしているような環境下で、屈辱的な落選を味わう。こののち、自信作の絵画を打ち壊し、焼き払って、島に転出したらしい。


中央画壇の公募展に落選し続ける背景になる原因が田中にあったのか、あるいは不遇の運命を背負った人物だったのかはわからない。どのような背景があるにしてもそのような人生を受け止めざるを得ない。


ただ思うのは田中一村の個性というか類稀な形態への感覚は、普通の範疇を越えていて、いわるゆ世の中の常識的な評価からは外れるものだったかもしれない。出ている杭はとかく打ち込まれてしまうか、あるいは横から叩かれてへし折られてしまう。田中の場合は、後者だったのだろうか。


もし日本画壇でなく広く世界に問うたならば、全くちがった評価を受けたことも考えられる。冷静にそう考えることができたなら(タラレバではあるが)、たぶん展開の異なった人生だったはず。一方、今見ている強烈な奄美の風土の絵画は、われわれの手元にはないわけだが。



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