たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

教室での先生の指摘

先日の記事で、アクリル静物画をアップした。そのあと絵画教室があって、その絵の仕上げを見てもらった。

「だいぶ描きこんだね」と褒められた言葉なのか、やり過ぎだと指摘されたのか判然としなかった。しばし絵を眺めたのち先生は言った。
「やっぱりテーブルが不安定だね。どうしてだろう。」
「あちこち主張しすぎているような気もするが」と、ためしに左右のテーブルの奥側の色合いを布と馴染ませるように言われる。コントラストを持って良いところと、ボンヤリと境界をぼかした方がいい場合とがあって、テーブルの奥側は、布と馴染んでいたほうがいいとのことだ。赤系の色合いで汚すように塗っていくと、とても不思議だが絵画の全体が、しっとりと落ちついた雰囲気に変わった。その理由は、画面の左右の空間がひとつにまとまってくる、つまりバラバラなモノたちがギュッと真ん中に家族のようにまとまってくるような感じだ。



「コーヒーミルと布の前後関係がうまくないなぁ・・・壁との馴染みも足りないし。」ということで、モノとモノの接している部分の前後関係を明確につけた。
「そういえばセザンヌは、背景を彫り込むように描いていますね。そんなことを思い出しましたよ。」
「そうそう、セザンヌは明確にそれを意識しているね。」と先生は、ご自分の蔵書の中からセザンヌの画集を探して眺めようとされたが、とうとう見つからなかった。


「背景がいちばん難しいなぁ・・・」と私が呟く。
「その通りなんだよね。昔の画家たちは背景をいかに描くか腐心していたんだ。」
黒い背景の自画像に見える絵画でも、巧みに背景の明るさや色彩を用いて、前後関係や明暗関係をつけている。見逃しがちだが背景の作り方はとても重要で、絵画の重要な要素なのだというお話が続く。


半日あれこれと検討を続けて、やがてキリがないからどこかで決着をつけましょうと言われて、ようやく静物画にサインを入れた。
その絵画が下のもの。直す前の絵画にもすっきりとした明瞭さがあったと思うのだが、仕上げた方は、何というのだろう濃密な空気が漂っている。モノたちがひとつにまとまっ世界を形成しているような感じ。ちょっとした仕上げひとつで印象が変わる。恐ろしいことでもある。ある意味で途中で投げ出していては見えてこなかった。


鉛筆画や水彩画でも、深みを生かして新境地で描けないものだろうか。




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