たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

模倣

模倣をするという行為は、愛から始まると信じている。
その「愛」の部分を本人が意識するかどうかは別として。


子供時代に妹から同じことを真似されていつもつきまとわれていたのは、まさにそれだったのだと思う。
いつも同じ遊びに参加したがり、兄に同化しようとしていたのだ。
しかし当時はただ纏いつかれている不自由な身のことしか考えなかったイケナイ罪な兄だったと言わなければならない。
そこに何の作為的なものはないのだった。


絵画を模写する行為でも、それが憧れの対象でなかったらそこに情熱は生まれない。
それを愛してやまない熱病状態、そこに到達し同化したいというエネルギーを持たないのならば、模写など何の意味もないだろう。


「脳を活性化するのは愛です」と松本元さんはいつも講演会で唱えていたらしい。
脳のエネルギー源は、対象への愛であることを、今ごろになって強く信じるようになった。
どんな理性的な言動をしようが、それを本人が活発に行うとすれば、そこには情動が働いている。
よくわからない「愛」という感情が、いちばんの根源に控えていて、エネルギーを送り続ける。


模倣したいと思う対象を、もし人生の中で見出せないとすれば、すでに黄昏の時を迎えている証と言っていいだろう。