さよなら

いよいよ追い詰められてしまったね
あなたの窮状は遠くで見ていてもわかる
孤立無援の背中がせつない
でもどうしようもない
本来なら
あなたの窮状を救うべき片腕たちは
もう心が離れてしまっているか
あるいは自分のことを優先的に考えて
ただ損だけはすまいと構えているかのよう

なぜそんな事態に陥ってしまったのだろう
そう考えているに違いないね
仕事の基本の基本
仕事の目的
なぜ働くのか
そのぎりぎりの一点を
はたして片腕たちと共有したことがあるだろうか
働く楽しさや
努力して達成するという根本にあるもの
それを考えたことがあるだろうか
相変わらず
いわれたことだけやればいいと言い張るだろうか

あなたが命ずればだれもそれに逆らうものはいない
そのことの重みをどう考えてきたのだろうか
命ずるものは
おのれの正しさを思い浮かべ
命ぜられるものは
従わなければ何が待っているかを思い浮かべる
そんなことは分りきったことなのに

能力的にとくべつ優れているわけではない
平凡な人間
おそらく自分でも気づいていると思うけれど
片腕になるはずのものたちは
その平凡さを乗り越えることも口にするだろう
あるいは行動してしまうかもしれない
他に教えを乞わねばならないこともあるだろう
でも無理をしたね
次の時代をつくれる能力と気概のある人間は
逃げてしまったか
遠ざけられてしまった
そのツケがいまジワリと利いてきているね

いま片腕となるべき人間は
心が離れているか
おのれのことを優先的に考えながら
この先がどのような事態になるのかすら見通そうとはしない
あなたが命じたのだからと
むしろ安住してまどろんでいるかのよう
その中できりきり舞いして
もう来るところまで来てしまったね
さよなら　Mさん