たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

新聞記事から

正月休みの1/4(金)に、読売新聞の『日本の知力』の記事を興味深く読んだ。サヴァン症候群という不思議な人々の紹介がされた後、識者に聞くと題して養老猛司氏の話が続く。養老氏の話を切抜いた紙片をずっと持ったままだった。

養老氏の話の概略は以下のとおりだ。
(1)特定分野に突出した能力を示すサヴァン症候群の脳は、人間の持つ能力として特殊ではない。
(2)サヴァンの脳は、聴覚や視覚との連合がうまく行かず、そこから突出した能力が現れる。
(3)現代人は、意識を中心に人工物を営々と築いてきた。脳化社会ともいえる。
(4)しかし脳も体の一部であり、無意識が人間の行動を支配しているという重要な事実が忘れ去られるようになった。
(5)生物の行動は、もともと次の瞬間にどう動くのか決まっていない。周りにうまく適応し行動できるのは「ふわっと」した状態。
(6)日本では古来より、剣の極意として「心をどこにも置くな」と教えてきた。無心で構えている無防備な状態が「隙がない」状態。同様に禅宗は「自我を捨てろ」と説いてきた。
(7)西洋流の自我を輸入した日本人は、頭で考えれば何でも解決する、みんな自我を持っていると錯覚し始めた。
(8)人間の知性を考えるとき、体や無意識を排除して考えるのは無意味で、知性とはもっと総合的なもの。

なおこの記事はいろいろな方に刺激を与えたようだ。養老氏の話の全文が、m_chiroさんのBLOGに掲載されている。その熱意に脱帽。


養老氏の話で、脳は脳のことを知らないという趣旨の話が面白かった。自分の脳のことは「眠い」とか「頭が痛い」ぐらいしか把握できていないということだ。脳化社会が進んで、意識の世界が全てになるのならば、脳だって意識の対象とならねばならない。脳も解明されてしかるべきだろう。
しかし、この世で最高位に位置する脳が、いったい自分が何ものなのか、何に支配されているのかが分からないとしたらちょっと滑稽な図なのだ。


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