たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

もひとつおまけに花の話題を

ハウスで開花しているサボテンの花のご紹介。このサボテンは兜丸という品種で、世界中で一二を争うくらい人気の高い品種だ。なにしろこの形状で植物だというのだから、小学生の頃、初めて見たときのショックは忘れられない。当時とても高価で、子供に買えるシロモノではなかった。そんなことがありこの品種にたいする執着は大変なものになってしまった。病みつきともいえる。いまや受粉させて品種交配して品種の作出まで手を染めている。ちょっとヤバイ。


でもご同病の方々も沢山いらっしゃって、その名もズバリ『日本兜狂会』というその道では超有名なクラブもある。


学名はアストロフィツムといって、まあ星のサボテンくらいの意味だ。白点が規則的に並び星空のような奇妙な顔をしている。この白点の並び方、白点の大きさ、その白さ、疣の大きさなどなど、どれくらいのものが作出されているかわからない。


現地では、こんな見事な姿は地上に出ていなくて、ほとんどが地中に埋まり、食害を受けないように自衛している。頂上だけ地面から顔をだし、花も頂点で咲く。


比較的、種は大きくて扱いやすく、発芽も容易だが、根が弱い品種なので、成長過程で結構根が腐ってダメになっていく。よさげな顔をしたチビサボほど弱いので、手塩にかけたのにダメになるという悲しい体験をさせてくれる品種でもある。


種の形状も面白い。半球のような、ゴムまりの空気が抜けて半分潰れて凹んだような形状をしている。地表に出た花がめでたく受精すると、種ができ地表にこぼれる。雨季が来て兜の埋まった地表を、雨が川のように流しさる。このお椀状になった種は、わがサボテンの師匠の説によれば、種が『舟』のように水の上を浮かび流されて、より低い水溜りみたいな湿った場所にたどり着き発芽するのだという。こうして溝から溝へと種を保存し拡大させているのだと。


また同じくサボテン師匠の推測だが、このプロセスによる発芽率は大変低くて、1万回に1回くらいではという話だ。春から秋まで次々と花を咲かせるのだが、そんな発芽する確率の低さから来ているのだろう。しかしこのようなプロセスで生き延びてきたアンタはエライね!と褒めてあげたい。